解決事例(相続)

解決事例(相続)1:相続放棄

解決事例(相続)

■依頼主:40代女性

■相談内容 
父が約半年前に亡くなった。先日,父の債権者から父の債務の支払いをするよう相続人の自分に通知が来た。その額は数百万円ということで,自身の支払いの限界を超える。調べたら相続放棄というものがあるらしいが,すでに父が亡くなってから3ヶ月を超えており,相続放棄ができるか。

■結果 
必要書類を整え,家庭裁判所に相続放棄申述の手続きをした。
被相続人と疎遠になっていたこと,相続人(依頼者)では被相続人の遺産の調査ができなかった事情等を報告して,無事,相続放棄が認められた。

■コメント
被相続人の遺産を相続するつもりがない場合,+財産より-財産(負債)のほうが多い場合,相続放棄という手続きを考えます。相続放棄をすると,初めから相続人でなかったことになります。
また,相続放棄は,自己のための相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄申述の手続が必要とされています。中には,被相続人が亡くなってから3ヶ月以内と考えている方もいらっしゃいますが,正確ではありません。例えば,被相続人と一緒に暮らしている場合は,普通はすぐに死亡の事実は分かるでしょうから,死亡から3ヶ月と考えればよいと思います。しかし,被相続人と疎遠になっているような場合,死亡の事実がすぐに分からない場合もあるでしょうから,死亡から3ヶ月と考えると間違いになります。
では,死亡を知ってから3ヶ月を経過した場合,まったく相続放棄はできないのでしょうか。そうなると本件のように被相続人の死亡から半年ほど経っていきなり債権者から通知が来た場合,思いもよらない債務を抱える事態となり,相続人に酷な場合があります。
この点,判例によれば,相続人において相続放棄をしなかったのが,被相続人に相続財産が全く存在しないと信じることについて相当な理由があって,被相続人との交際状況等からして相続人に相続財産の調査を期待することが著しく困難な事情がある場合は,相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算するものとされています。
本件でもそのような事情が認められて,相続放棄が認められたものと考えます。